本年度は非可換代数系としてaffine Wenzl algebraを考察した。昨年までの研究ではaffine Hecke algebraのcyclotomic quotientを考えることにより、有限次元代数の理論が適用でき、また結晶基底の理論との関係も発見出来て大きな成功を収めたが、同様の考察をaffine Wenzl algebraに対して行おうとするものである。これは華東師範大学Hebing Rui、シドニー大学Andrew Mathas両氏との共同研究である。 affine Wenzl algebraはM.Nazarovにより導入されたが、彼は複素数体上のみで考察しており、またその後の研究はない新しい代数である。degenerate affine Hecke algebraとも密接に関連しており、Lusztigによる幾何的表現論の研究との関係を考慮すれば、その方向への一般化も期待される。 本年度の研究の結果、cyclotomic Wenzl algebraのモジュラー表現の研究に従来の手法を応用できることがわかった。以下、より具体的に成果を列挙する。まず、かなり複雑にはなるがcyclotomic Wenzl algebraのsemi normal表現の構成に成功した。また、cyclotomic quotientの存在条件はSchurのQ-functionと関係することもわかった。cyclotomic quotientの存在条件はcyclotomic Wenzl algebraのパラメータに関する条件で与えられるが、これがSchurのQ-functionを用いて具体的に記述できるのである。 さらにcyclotomic Wenzl algebraがGrahamとLehrerの意味でのcellular algebraになることも証明できた。この結果、既約表現の分類が可能となる。分類のためにはcell表現の上に定義された内積に関する条件を調べることが必要になるが、この条件をdegenerate affine Hecke algebraのcyclotomic quotientの場合の条件に帰着することもできた。 以上本年度得られた結果については現在共著論文を準備中である。
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