研究概要 |
複素トーラスのファイバー空間に関する研究では,付随するホッジ構造の変動が実偏極しか持たないにも関わらず,大域的モノドロミーが完全可約性をもつ,ということの証明が非常に簡明になった. 昨年度より続いていた指数2の対数的デルペッツォ曲面の分類は,正標数の場合も込めて完了した.その分類方法は,基本三つ組みという,射影平面やヒルツェブルフ曲面となる有理曲面,その上の被約因子,及びその因子上の有効なカルティエ因子からなるもので,ある条件を持たすものの分類に置き換えることでなされた.基本三つ組みの情報から,すべての指数2の対数的デルペッツォ曲面について,それを重み付き射影空間(またはその直積)の中の部分多様体として方程式で具体的に表示することにも成功した.できあがったプレプリントは150ページを超え大作となった. 同型でない全射自己準同型射を持つ多様体の研究では,非特異3次元射影的代数多様体で小平次元が非負の場合の分類が藤本圭男氏との共同研究で完成した.その結果,そのような多様体の適当な不分岐ガロア被覆はアーベル概型の構造をもつことがわかった.また一般次元の非特異射影的代数多様体のエタールな自己準同型射は,極小モデル予想,アバンダンス予想などの予想を仮定すると,本質的にはアーベル多様体の自己準同型射から得られることが,シンガポール国立大の張氏との共同研究でわかった.ここで小平次元が正のとき,飯高ファイバー空間の底空間に誘導される自己同型射が位数有限になることを,コンパクトケーラー多様体の場合まで込めて証明できた.
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