研究概要 |
以下s=σ+itを複素変数,Z=X+iyを複素上半平面のパラメタとし,偶数kに対し,SL_2(Z)に付随する(重さkの)非正則Eisenstein級数E_kを数E_k(S; Z)=(1/2)y^2Σ_<(c, d)>=_1>(cz+d)^<-k>|cz+d|^<-2s>(Res>1)及びその全s平面の有理型関数への接続として定義する.この関数は現代数学の様々な局面に現れ,特にそのFourier展開は,保型形式論・二次形式論・Laplace作用素論等とも関連して多面的な解釈がなされる重要な対象である. 以下,ζ(s)をRiemannゼータ関数,またEpsteinゼータ関数ζz^2をζz^2(s; z)=Σ^<t∞>_<m, n=0>|m+nz|^<-2s>(Res>1,和においてはm=n=0となる項を除く)及びその全s平面の有理型関数への接続として定義する.本研究代表者は以前,ζz^2(s; z)のy→+∞における完金漸近展開を導いたが,この漸近展開からk=0のときに成り立つ関係式E_0(s; z)=y^sζz^2(s; z)/ζ(2s)を経由してE_0(s; z)のy→+∞おける完全漸近展開が得られる.2006年度の研究においては,このE_0(s; z)の完全漸近展開を出発点として,Maassの(重さ変更)微分作用素のiterationを用いてE_k(s; z)のの完全漸近展開へ移行する計算を行い,現時点で,任意の偶数列こ対してE_k(s; z)完全漸近展開の明示的な形をほぼ解明した.そこで今後は,このE_k(s; z)の漸近級数をRankin-Selbergの方法により得られる保型L関数の積分表示の被積分関数に代入するなどの手法により,保型L関数の特殊値や解析的性質の解明にE_k(s; z)の漸近展開を応用したい.さらには,上記T.Nodaの研究で重要な役割を果たしたLaplace-Mellin変換がC^∞型形式の空間の性質の研究に有効であるという着眼をさらに発展させ,本申請者のこれまでの研究で有効性を発揮した,Mellin-Barnes型積分を用いてE_0(s; z)のLaplace-Mellin変換・Riemann-Liouville変換を明示的に求める方法を応用しT.Nodaの上述の方向の研究も一層深化・発展させる計画である.
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