abc予想は数論における最大の未解決問題と言われている。それはFermatの大定理、素数の分布に関する問題や、Mordell予想、Siege-zeroというリーマン予想に関連する問題についての部分的結果、などを従えることからも理解できる。そのabc予想の非常に弱い形の表示は、楕円曲線上の対数ではなく通常の対数を用いたp進対数一次形式から計算できることが、K.YuおよびC.Stewartらの仕事からわかるが、この評価は弱すぎ無駄が多い。現予想を導く強い評価を得ることは世界中の数論の学者の夢である。このような問題に対して新局面を開く可能性のある周期予想経由の考察を行っている。今年度に研究代表者は予定通りまずLutz-Weilのp進楕円関数について、通常のp進対数一次形式の楕円曲線上でのアナロジーに対応する評価の計算を終えた。これは研究代表者が以前S.David氏と共同で開発した新しい方法に乗っ取った手法を用いる。異なる方法を組み合わせることにより更なる評価の改良も発見した。今後の課題はこれをabc予想に関連する周期予想に結びつけることであるが、そのための準備になるTateのp進楕円関数についてのp進対数一次形式の評価も得た。現在論文執筆中である。また関連する問題として、指数方程式の整数解の個数の評価も得ることが出来た。これは指数底の数によらない絶対的な評価であり、Evertse-Schmidt-SchlickeweiおよびBeukers-Schlickeweiによる、単数群のランクと独立な単数方程式の解の評価の結果を用いる。この整数解の高さの評価については、mを素数とは限らない2以上の整数とした場合、本質的にK.Mahlerが考え、Y.Bugeaudも研究した、m進対数一次形式の評価を応用する。
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