研究概要 |
Big Cohen-Macaulay加群の構成とその応用:1970年前後,H.BassやM.Auslander等によって問われたネータ局所環上有限生成加群に関する諸予想は,「ホモロジー予想」とも呼ばれ,可換代数学における基本重要問題として今日まで多くの研究がなされてきた.1973年C.Peskine-L.Szpiroは,「予想」がネータ局所環上有限生成自由加群の複体の交叉予想から導かれることを示し,正標数の体を含む場合の上記諸予想を解決した.その直後,M.Hochsterは,ネータ局所環のパラメーター系が正則列である,いわゆる「Big Cohen-Macaulay加群」の存在が単項予想,直和因子予想や新交叉予想を導き,それら予想がPeskine-Szpiroの交叉予想を導くことを示した.そして,体を含むネータ局所環上にBig Cohen-Macaulay加群を構成し,等標数ネータ局所環では上記予想がすべて成立することを示した.即ち,HochsterはFrobenius写像の技法を巧妙に用い,正標数pの体を含むネータ局所環上のBig Cohen-Macaulay加群の存在を示した.標数0の体を含むネータ局所環についても,M.Artinによる近似定理を用い,正標数の場合に還元することによりその存在を示し,等標数ネータ局所環上にはBig Cohen-Macaulay加群が存在することを証明した. それ以来,多くの可換環論研究者が不等標数ネータ局所環上にBig Cohen-Macaulay加群を構成しようと努力したが,成功しなかった. 我々は,先ず完備局所環の構造定理・Witt表現,FlennerのBertini定理・Jacobian判定法,Frobenius写像の一般化等を考察した.さらに,2次元不等標数完備正則局所環上のBig Cohen-Macaulay加群の構成,即ちmodificationの明示表現を詳しく調べ,定義式,Frobenius写像,Witt表現の基本性質等を具体的に考察し,等標数ネータ局所環の単項予想より,3次元以上の不等標数ネータ局所環上にも,帰納的にBig Cohen-Macaulay加群が構成できることを示しつつある.
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