研究概要 |
本研究においては、単純楕円特異点のLie環論的構成のための要となる楕円曲線上の不安定正則主G-束の特徴付けを行った。すなわち、double loop Lie環のC*束E(g)^上にdouble loop群E(G)の作用が定まり、その作用によるE(g)^上のE(G)不変式環はaffine Lie algebraの指標で生成されることが先ず分かる。さらに、基本指標達x0,x1,...,xlを用いて、E(g)^からCx...xC(l+1-times)への正則写像が定まり、その0-fibreは楕円曲線上の不安定正則主G-束の成す無限次元多様体であることが証明出来た。単純特異点の場合には冪零多様体が重要な役割を果たしたが、このことより単純楕円特異点においては、不安定主G-束の成す無限次元の多様体が重要な役割を担うことが分かる。更に、正則G-束の自己同形群とその正則G-束の中心化群との関係から、どの不安定G-束の横断面を考えると単純楕円特異点が得られるかが予想されている。また、副産物ではあるが、楕円曲線上の半安定正則G-束のcoarse moduliが、我々の立場から構成できる。単純楕円特異点のLie環論的構成は目の前まで来ている。 さて、Painleve方程式との関係であるが、離散Painleve方程式として、E8,E7,E6,D5,A4,型などが知られているが、これらは、上記の単純楕円特異点の分類と一致し、特異点理論との関係を想像させる。実際、単純特異点の特異点解消空間は、Painleve方程式PVI, PV, PIV, PIII, PIIの初期値空間にsymplectic多様体としてopen denseに埋め込まれることが分かっている。特異点理論とPainleve方程式の関係を明らかにすることは、今後の重要な課題である。
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