研究概要 |
本年度は前年度に引き続き、概複素構造にかかわる諸問題のなかで主として次ぎの話題について研究した。 (1)概複素構造の積分可能性について (2)概複素多様体の各種部分多様体について (3)上記(1)と(2)の関連および応用について (1)に関しては、「Goldberg予想」を中心に研究をおこなった。スカラー曲率が負の場合について、予想は未だに未解決のままである。コンパクトの仮定を除いた場合はいくつかの反例が構成されている。不定値計量の場合(ここでは、あるNeutralなWalker計量)については、分担者松下等により8次元の反例が構成されている。彼等はさらに4次元Walker計量を持ったある種の概ケーラー・アインシュタイン多様体の構造を決定している。Goldberg予想に関連した結果については、コンパクト概ケーラー多様体上の概ケーラー構造全体からなる空間およびその部分空間を考えその上で定義されたある種の汎関数(Blair-Ianus汎関数およびその一般化)に対する変分問題を考え,対応するEuler-Lagrange方程式を導いている。予想そのものに関しては4次元の場合は第一チャーン数,高次元の場合は研究代表者による積分公式より定義される汎関数に対する変分問題を考え、そのEuler-Lagrange方程式を導いている。目下この方程式をもとにして、4次元の場合の予想の完全解決を目指しているところである。 (2)に関しては、分担者橋本等との共同において,8次元ユークリッド空間をケーリー代数の空間とみなし,その中の6次元の向き付けられた部分多様体で等質概エルミート多様体になるものをSpin(7)-幾何の範疇で分類している。 (3)に関しては,4次元コンパクト概超エルミート・アインシュタイン多様体の構造を決定している。また、一般局所概超ケーラー多様体は局所共形超ケーラー多様体であることを示している。さらに、分担者長谷川は、3次元コンパクト複素可解多様体の完全な分類及びその中で擬ケーラー構造を持つものの決定に成功している。
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