研究概要 |
本研究は可微分多様体の微分同相群、Lipschitz同相群、可微分G-多様体の同変微分同相群、更に曲面上の擬アノソフ同相群の研究を行うことが目的である。平成17年度は以下のような研究を行った。 1)これまでに有限群Gの表現空間.Vに対して、コンパクトな台をもち恒等写像とイソトピックなVの同変微分同相全体のなす群D_G(V)の1次元ホモロジー群H_1(D_G(V))を求めて、その結果を用いて以下のことを導いた. ・可微分G-多様体Mに対してH_1(D_G(M))を決定 ・可微分軌道体Mに対してH_1(D(M))を決定 これらの結果と方法を用いてモジュラー群の場合に考察した。即ちΓ=SL(2,Z)が上半平面Hにメビウス変換として作用するときを考える。このときその軌道空間H/Γに対してH_1(D(H/Γ))はΓの双曲的固定点対応する特異点の情報を記述していることが分かる。次にHに尖点を付け加えた空間H*の軌道空間を考察した。この空間はモジュラー群の理論では2次元リーマン球面として取り扱うがここでは、可微分軌道体を一般化した特異点をもつ多様体として考える。このとき尖点の回りでは無限群が等方部分群となり、通常の変換群の方法では取り扱うことができないが、この揚合はスライスに相当するが存在してH_1(D(H*/Γ))が双曲的固定点と尖点情報を記述していることが分かる。この方法は更にフックス群の場合にも適用できることが分かった。 2)種数gの有向閉曲面上の擬アノソフ同相写像に対する拡大度(dilatation)の最小直を決定する問題は、基本的かつ未解決である。これまでに知られている擬アノソフ同相写像の構成法法に関して、各種数における最小値を上から評価する重要な例を、懸垂アノソフ流のバーコフ切断を調べることにより発見した。 3)当科学研究費も用いて国内外の微分同相群の研究を活発に行っている研究者による「微分同相群と関連分野」研究集会を開催した(http: //math.shinshu-u.ac.jp/~kabe/diffeo-program.htm)。
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