研究概要 |
本研究は可微分多様体の微分同相群、Lipschitz同相群、可微分G-多様体の同変微分同相群、更に曲面上の擬アノソフ同相群の研究を行い以下のような研究成果を得た。 1.可微分多様体Mの恒等写像とイソトピックであるコンパクトな台をもつMの微分同相全体のなす群D(M)はその交換子群と一致して、完全群であることが良く知られているが、Mが境界を持つ場合もMの次元が2次元以上の場合に同様なことが成立することを証明した。この結果を用いるとHirzebruch-Mayer O(n)-多様体Mに対してコンパクトな台をもち恒等写像とG-イソトピックな同変微分同相群D_G(M)が完全群であることを示すことができる。また葉層構造を保つ多様体の場合にも応用される。 2.有限群Gの表現空間をVとする。Sternbergの線形化定理とTsuboiによる葉層層構造の葉を保つ微分同相群が完全なことを用いてホモロジー群H_1(D_G(V))を決定した。またこの結果を用いて微分軌道体Mに対してH_1(D(M))も計算できることを示した。 3.モジュラー群Γ=SL(2,Z)が上半平面Hにメビウス変換として作用するとき、軌道空間H/Γに対してH_1(D(H/Γ))はΓの双曲的固定点対応する特異点の情報を記述していることを示した。次にHに尖点を付け加えた空間H^*の軌道空間を考察し、H_1(D(H^*/Γ))が双曲的固定点と尖点情報を記述していることを示した。この方法は更にフックス群の場合に拡張できることも証明した。 4.種数gの有向閉曲面上の擬アノソフ同相写像に対する拡大度(dilatation)の最小値を決定する問題は、基本的かつ未解決である。これまでに知られている擬アノソフ同相写像の構成方法に関して、各種数における最小値を上から評価する重要な例を、懸垂アノソフ流のバーコフ切断を調べることにより発見した。 5.当科学研究費も用いて国内外の微分同相群の研究を活発に行っている研究者による「微分同相群と関連分野」研究集会を開催し多くの成果発表および研究交流が行われた。 (http://math.shinshu-u.ac.jp/~kabe/diffeo-program.htm)
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