リーマン面の退化の特異ファイバーは、位相モノドロミーによりその形状が決まることが松本幸夫とモンテシノスにより示された。それによると、位相モノドロミーが周期的な場合はコアと呼ばれる中心成分と射影直線の鎖(枝)により特異ファイバーは構成されている。コアが射影直線で、かつ枝の本数がちょうど3本のとき、阿原一志氏との共同研究により、この特異ファイバーは必ず分裂族をもつことを示した。証明には、私により示された剥離族の存在の判定法を本質的に用いる。とくに重要な系として、特異ファイバーが、3本の枝をもちコアが射影直線の星形の場合には、その周期的モノドロミーは、"幾何的に"、つまり分裂属を系由して周期的モノドロミーの群論的分解が得られることが判明した。一方、枝の本数が4本以上の特異ファイバーの場合には私の剥離族の存在の判定法をすり抜けてしまう場合があることも計算機実験でわかった。つまり、枝の本数が4本以上の場合には、剥離族を構成する際にカギとなる単純外皮が必ずしも存在しないときがあることを発見した。ただし、この場合にも、単純外皮でなく、複数の外皮で剥離族が作れる可能性があるので一概に分裂しないとは言えない。しかしながら、複数の外皮から剥離族を作るには、膨大な計算を要するので、この方向の研究は今後の課題でもある。
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