研究概要 |
双曲3次元多様体の例外的デーン手術において,本質的トーラスを生成する場合は典型的である.そのような手術に対して,手術のパラメーターであるスロープ間の距離は8以下であることが知られていた.さらに,6以上の値を実現する双曲3次元多様体は4つしか存在せず,その特定も行われていた.従って,次に問題となるのが距離5を実現する双曲3次元多様体の決定であった.平成16年度の研究において,そのような多様体の境界はトーラス1つあるいは2つからなるものでなければならないことを示していたのだが,本年度はその分析をさらに進め,スロープ間の距離が5であるような本質的トーラスを生成するデーン手術を許容する多様体の決定に成功した.これにより,ラージとよばれる双曲3次元多様体は,そういった多様体のクラスから除外されることがわかり,ラージな双曲3次元多様体に対する例外的デーン手術間の最大距離の表が完成することとなったことは大きな成果である.この成果は,すでに論文にまとめ,国際学術雑誌に受理されており,現在印刷中である.また,12月に行われた国内の研究集会において成果発表を行った.次に,3次元球面内の双曲結び目に対する本質的トーラスを生成する例外的デーン手術について,そのスロープは結び目の種数の4倍を上限とすると予想しているのだが,本質的トーラスが手術のコア結び目と2回交わる場合においてこの予想を肯定的に解決した.以前からこの予想には取り組んできたが,コアとの交わりが4回になる場合だけが残されており,次年度への継続課題である.
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