研究概要 |
本研究では,トーラスの生成に関わる例外的デーン手術の研究を行った.双曲3次元多様体に対するデーン手術によって,本質的トーラスを生成する場合およびヘガード・トーラスを生成する場合の研究が中核をなし,派生的な課題も含めて,具体的には以下の問題を考察し,成果を得た. (1)本質的トーラスを生成する例外的デーン手術:3次元球面内の双曲結び目で,距離が5のトロイダル手術を許容するものを決定した.また,ラージとよばれる双曲3次元多様体に対して,トロイダル手術間の距離は4以下であることを証明した. (2)例外的デーン手術の配列:整数的なデーン手術が例外的デーン手術の本質的な部分を占めると予想されているのだが,既存の例を調べると,連続整数に対応することが確認された.ペンタングルを利用して,例外的デーン手術を複数許容する双曲結び目を容易に構成する方法を考案した.たとえば,任意の連続3整数に対して,それらに対応したデーン手術でザイフェルト多様体を生成する結び目を構成した. (3)向き付け不可能な曲面を生成するデーン手術:種数が3以上の向き付け不可能曲面が,双曲結び目の非整数的デーン手術によって生成できることを示した. (4)doubly primitive knotのアレキサンダー多項式:デーン手術によってレンズ空問を生成できる結び目は,doubly primitive knotであると予想されている.この重要なクラスに対して,そのアレキサンダー多項式の公式を与えた. (5)無限個のknot-surgery descriptionをもつザイフェルト多様体の構成:無限個の異なる双曲結び目から同じスロープのデーン手術によって生成できるザイフェルト多様体を初めて構成したものである.また,それら双曲結び目は一切の対称性をもたず,3次元球面の種数2のへガード曲面上に乗らないという極めて著しい性質も有している.
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