研究概要 |
シュワルツ微分の概念を幾何構造に応じて高次元化するとき,幾種類かの基本となる考え方がある.今年度の研究においては,特に射影空間への正規化された写像のロンスキアンとしてシュワルツ微分を捉える方法論について研究を行った.これは他の方法に比べ解空間の幾何構造を理解する上で有効であることが分かってきたが,一方その問題点もいくつか検証された.実際に得られた結果を幾何構造別に列挙する: (1)接触構造について 接触変換のシュワルツ理論の構築の試みはすでにDaniel Foxによって研究されているが,まだ完全なものは得られていない.上記の方法はFoxの結果をより明解に説明することを可能にするばかりでなく,理論の本質を明らかにするものである. (2)共形構造について 研究代表者は名古屋大学多元数理科学研究科の佐藤肇氏との共同研究によって共形変換のシュワルツ微分の理論が構築したが,上記の方法論をこの理論について検証したところ,当初考えていた方法のままでは若干の不具合が生じることが明らかとなった.その原因のひとつは,解の間の内積を定義するとき高次の導関数の積にかかる係数が定数でないことにあった.これは今後の改善において重要な視点となるものである. (3)CR構造について CR構造に関するシュワルツ理論はいまだ何も得られていないが,上記の方法によりその縮小版を得ることができた.しかしこれは満足のいく結果とは言えない. 今後の研究の方針として,CR構造はいろいろな点で共形構造と類似していることに鑑み,(2)で得られた知見がCR構造に関する結果の不十分な点を補う上で重要であると考えられるので,それらのことを重点的に調べていきたいと考えている.
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