本研究では有限要素解の事後誤差評価手法について研究しているが、現時点では次のような新たな知見を得た。 1.ハイパーサークル法に基づく事後誤差評価手法の研究:ポアッソン方程式の境界値問題について、表記の事後評価手法の解析、混合法や関連手法の開発、数値実験による検討と検証を実施し、国際会議や研究集会で発表もした。この手法は必要な正定数が不要あるいは少ないという特色を持つが、文献調査での予測どおり、適用範囲は限定されることが再確認された。その点に配意しつつ、さらに可能性を検討すべきである。 2.誤差定数の値の評価:一般に事前誤差評価式でも事後誤差評価式でも、要素寸法や解あるいはデータの関数のノルム(またはセミノルム)のほかに、各種の正定数が現れる。従来は具体的値の評価が困難であったこのような定数について、事後評価の精密化に寄与すべく、できるだけ良い精度で値を評価する研究を実施している。得られた成果の一部は研究集会で発表し、国内学会、国際会議での発表と論文を準備中である。 3.板曲げ要素の考察:板曲げ要素の開発や精度解析は実用と理論の双方で重要である。特に、せん断変形の近似関数の選び方、計算法は切実である。混合法としての理論解析や典型的例題による数値実験により問題点を明らかにしつつあり、今後の事後開発手法の開発の基礎としたい。既に得られた成果の一部は、国内学会、国際会議などで発表し、論文として刊行された。 4.電磁場要素の考察:電磁場問題では、辺要素など特殊なベクトル要素が用いられるが、その誤差挙動については未知の点も多い。理論解析と数値実験を通し問題点を明らかにし、要素の開発、改良に寄与し、誤差評価手法の確立を目指す。成果の一部は国内外の集会で公表し、外国研究者との共著論文を投稿中である。
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