以前、Ben Hamblyおよび服部哲弥と協同で、有限シェルピンスキー・ガスケット上でブラウン運動と自己回避過程をパラメータに関して連続につなぐ軌跡が連続な確率過程の族を、プレ・シェルピンスキー・ガスケット上の自己反発ウォークの族の極限として構成した。 今年度は、まずこのウォークの族が自己吸引ウォークも含むように拡張でき、さらに無限プレ・シェルピンスキー・ガスケット上のウォークに拡張できることを示した。そして、平均2乗距離の指数や重複対数の法則などの歩数が大きいときの漸近的性質を得ることが出来た。 さらに、同様の方法は、シェルピンスキー・ガスケット上で、繰り込み群を用いて構成される一般のウォークに対しても適用できることが分かった。 これらのウォークは一般に非マルコフ過程であり(自己回避過程は一度通った点は2度と通れないし、自己反発過程も同じ点は複数回通りにくい。すなわち過去の履歴に強く依存する)、よく知られたマルコフ過程の手法は使えないために、扱いが難しい部類に属する。しかしプレ・シェルピンスキー・ガスケット上に繰り込み群を用いて構成したウォークは一種の自己相似性をもつ。それを巧みに利用して鏡映原理を得ることができ、漸近挙動を調べることができることを示した。 これらの結果は次のリストに挙げた論文として発表された。 このウォークの族の再帰性に関する結果も得て、それがゲッチンゲン大学のデンカー氏との共著のプレプリントになっている。
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