フラクタル空間のひとつであるシェルピンスキー・ガスケット上、および1次元空間上の自己反発ウォークおよび自己吸引ウォークの族を構成し、その性質の研究を行ってきた。このウォークの族はパラメータuを含み、u=0のとき自己回避ウォーク、0<u<1のとき自己反発ウォーク、u=1で単純ランダムウォーク、u>1で自己吸引ウォークとなる。この族はuに関して測度の弱収束の意味で連続であるだけでなく、平均2乗変位の指数も連続に変化することを証明した。また、重複対数の法則および再帰性(u>0ならば、確率1でいっかは出発点にもどる)などの漸近的性質も得た。 19年度は、再帰性をさらに深く調べ、平均再帰時間(出発点に戻るまでの平均時間)に関する結果も得た。 平均再帰時間は、1次元空間上ではuの値にかかわらず無限大であり、シェルピンスキー・ガスケット上では、あるc>1が存在して、0<u<cでは無限大になる。平均再帰時間が無限大であることから、さらに、シェルピンスキー・ガスケットおよび1次元空間上の無限長のpath空間上に、シグマ有限でエルゴード的な不変測度が一意に存在することが導かれる。 シェルピンスキー・ガスケットおよび1次元空間上では、自己反発、自己吸引ウォークのみならず、より一般的なウォークがくりこみ群を用いて構成できることも示した。それらが再帰的であるための十分条件も得られた。
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