本研究は、本邦北海道全域にその感染域が拡大し、また本州に感染の侵入が懸念されている人畜共通感染症であるエキノコックス症(多包条虫症)について、伝播に関する数理モデルを構成し、シミュレーションを通して宿主動物に対する対エキノコックス・コントロール対策効果予測を行い、医学者・獣医学者との協力のもとで住民の感染危険防止に貢献することにある。 研究初年度である本年度においては、エキノコックス伝播に関する精密数理モデルの構築を主体に研究を進めた。エキノコックスの感染環においては、自然環境中に排出される虫卵の扱いが重要となる。感染力を有する活性虫卵量は、終宿主より日々排出される虫卵の積分と見なされ、この虫卵の活性度は温度、湿度に依存して減衰するものと考えられる。虫卵を排出する条虫数は、中間宿主におけるシスト形成過程に依存し、終宿主が捕食する過程における形成されたシストの分布の考察に基づきモデル化される。この複雑な過程のモデル化を進展させた。あわせて感染強度について検討を行った。 本年度は、さらに終宿主(キタキツネ)個体群に関する、individualモデル化の研究に着手した。感染進展過程に適用する確率分布型な検討を進めた。
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