研究概要 |
最終年度にあたり,過去2年に実施し積み上げてきた研究成果をもとに更なる新しい研究を発展させ,研究の取りまとめを行った。生物学的同等性の定式化には,平均同等性(ABE),母集団同等性(PBE),個別同等性(IBE)の3つがあり,同等性の概念としてはABE<PBE<IBEの順で強くなり,一般には解析手法,その理論解明もABE<PBE<IBEの順で複雑となる。これまで段階的に研究を進めてきたが,18年度はPBEさらにはIBEへ研究対象を広げて研究を行った。過去2年では,まずABEに関するAnderson-Hauckの検定手法を中心に過去の研究のサーベイを行い,同等性の検定と信頼区間の関連性について興味深い結果を得た。2年目はABEに対する検定における信頼区間を用いる方法の統一的な理解に向けた理論研究を行った。18年度はこれらの結果をPBEさらにはIBEにおける問題として定式化し,問題解決に向けた研究を進めた。ただこれについては当初の研究見通しに無かった課題が発生し,本研究期間で十分な研究成果を達成するには至っておらず,今後更なる研究が必要である。 一方それに併せて,ABEの問題を多次元化する問題に取り組んだ。同等性の検定を構成しさらに最適性を検証するためには,棄却域の幾何学的な特徴付けが数学的方法論として不可欠であるが,本年度の研究で鏡映群に拡張されたarrangement orderingと基本領域に関する不等式論について解明を進め,興味深い結果を得ることが出来た。この結果は基礎的ではあるが,同等性の検定を含めた広い統計推測理論において有用なものとなることが期待される。この結果をまとめた論文については期間内に発表するに至らなかったが,その草稿を書き上げており今後発表に向けた作業に取り掛かる。その他,検出力と標本数の関係についてChow等の本で紹介されている方法論の数学的な検証,および検出力を変動係数の関数として評価する方法についても検討を試みたが,一部興味深い知見が得られたが残念ながら十分な解明,公表には至っていない。 以上は研究代表者が主として分担してきた研究であるが,その他,二段階抽出による手法については高田が研究を分担し,信頼区間に関する重要な結果を海外の有力学術誌に発表した。金は統計量の分布に関連した漸近分布理論について研究を行い,本研究課題の進展に貢献した。
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