研究概要 |
半順序集合P=(X,>)の2要素a, bが上界(下界)を持つとき、a, bを辺で結ぶことによって得られるX上のグラフをPの上界(下界)グラフと呼ぶ。上界グラフとなる条件はいくつか知られているが、本研究では、グラフの辺の縮約と点の分割の操作の結果生ずるグラフの構造的な特徴によって、その条件付けを試みた。ここで言うグラフの辺の縮約とは、非単体的2点a, bを端点に持つグラフの一辺e=(a, b)をそのグラフから除去し、その端点aとbを重ねあわせて同一化させる操作であり、ここで言う点の分割とは、非単体的一点aに対して、aを除去したうえで新たに2点c, dを追加し、aを含むクリークのすべての点とc, dを辺で結ぶ操作である。元のグラフが上界グラフであるとき、これらの操作の結果も上界グラフであることを証明した。対応する半順序集合においては、一方が、要素と関係の除去による部分半順序集合の構成にあたり、他方が、要素と関係の追加による半順序集合の拡大にあたる。これらの操作は互いに可逆な操作であることも示された。さらに、上界グラフに縮約の操作を繰り返し行った結果得られるグラフの特徴を示すことによって、上界グラフの構成的な特徴づけができることを示した。すなわち、非単体的2点を端点に持つ辺のうち、一定の局所的条件を満たすものを選び、縮約を繰り返した結果がNOVAと呼ばれる特殊なグラフの族に帰着するとき、かつそのときに限り、そのグラフは上界グラフであることが証明された。ここで、NOVAとは、星グラフK(1,n)の各辺を位数2以上の完全グラフに置き換えて得られるグラフの族である。
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