研究課題/領域番号 |
16540119
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小松 彦三郎 東京理科大学, 理学部第一部, 教授 (40011473)
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研究分担者 |
渡邊 純成 東京学芸大学, 教育学部, 助手 (10262221)
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キーワード | 自然科学の東西交流 / 関孝和 / 解見題之法 / 大成算經 / フーリエの熱の理論 / 満州語 / ユークリッド / 解剖学 |
研究概要 |
小松は関孝和の「三部抄」すなわち「解見題之法」「解隠題之法」「解伏題之法」の山路主任本を復元し、これを基に校訂本を作成した。また、これに併行して關及び建部賢明、賢弘兄弟が著したとされる「大成算經」全20巻の校訂を続けている。「三部抄」は同じく関が著した「七部書」と共に「大成算經」を編集する際のノートとして書かれたと思われるが、今年度は、特に「解見題之法」についてその内容を詳しく吟味し、「大成算經」のどこに引き継がれたかを調査した。同時に、これら和算の古典の内容と前後の時代の諸外国の数学を比較して、隣国に伝わるにも100年以上の時間を要するというゆっくりとした伝搬ではあるが、日本、中国、そしてヨーロッパの間で、これまで認識されていたよりはるかに深い文化交流があったという証拠を集めつつある。 この他、小松は現在西村重人らと共にフーリエの「熱の解析的理論」の翻訳を行っているが、今年度はその解説を用意する一環として、フーリエはフーリエ級数展開定理およびフーリエ積分定理を定式化したが、証明には失敗したという通説が間違いであることを立証した。 渡邊は『満文算法原本』の三分の一について、満洲文原文とその英訳を公刊した。『格体全録』の本文について、錯簡・医学的内容・序文の全訳と分析を行ない、公刊した。何れも、満洲語自然科学書の本文の組織的な研究としては、世界でもあまり例のない試みである。これらの書の語彙に関する初等的な研究も公刊した。 一つの文献を読んでその内容を紹介することが科学史研究とされていた時代は終わり、現在ではその上に科学史として新しいストーリーを作ったものでなければ科学史とはいえないというのが、科学史家の見解のようであるが、われわれの研究は有名な文献もその内容が著者の意図にそって紹介されているとは限らないこと、またカタログに記載されても何十年も読まれず眠ったままのものが少なくないことを示している。
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