研究概要 |
非圧縮粘性流体の運動を記述する非線型偏微分方程式として知られるNavier-Stokes方程式を,2種類の重要な非有界領域において考察した. 1.aperture領域 aperture領域は,上下半空間が通路(aperture)により連結された領域であり,線形化されたStokes方程式に対してすら,通常の附帯条件のもとでは(考える解のクラスにより)解が無数に存在することが起こりうる.本研究では,付加境界条件として通路での流量をゼロに指定するとき,初期データがL^nにおいて小さい場合のNavier-Stokes方程式の初期値問題の時間大域解の存在を証明し,またその解の時間無限大での種々の漸近挙動を示した(研究代表者による単著,Adv.Math.Fluid Mech.). 2.回転する物体の外部領域 標記の領域は時間の経過とともに変化するが,回転座標系により方程式を書き直すと,一定な外部領域における問題となる.しかし,その変数変換により,剛体の回転運動をあらわす非有界係数をもつ移流項が現れ,これを粘性項の摂動として扱うことはできない.従って,その移流項を含む線型作用素の数学的性質を深く調べることが,当問題の解析において必須となる.本研究では,まず全空間において線型定常問題を考察し,流速の2階微分と圧力の1階微分のL^qでのアプリオリ評価を示した(研究代表者およびR.Farwig, D.Muellerによる共著,Pacific.J.Math.).また,外力の滑らかさを1階下げたときの線型定常問題の弱解も考察し,全空間と外部領域の両方に対して,流速の1階微分と圧力自身のL^qでのアプリオリ評価を示した.
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