研究概要 |
非圧縮粘性流体の運動を記述する非線型偏微分方程式として知られるNavier-Stokes方程式の解の安定性を,2種類の重要な非有界領域,すなわちaperture領域と回転物体の外部領域において考察するのが本研究の目的であるが,17年度は3次元外部領域の研究に集中した.物体が回転軸について軸対称でない場合を考えるので,流体の占める領域は時間の経過とともに変化するが,回転座標系により書き直すと,一定な外部領域における問題となる.しかし,その変数変換により,剛体の回転運動をあらわす非有界係数をもつ移流項が現れ,これを粘性項の摂動として扱うことはできない.従って,その移流項を含む線型作用素の数学的性質を深く調べることが,当問題の解析において必須となる. 本研究では,まず3次元全空間において線型定常問題を考察し,外力がL_q関数の発散型であるとき,流速の1階微分と圧力のL_q空間でのアプリオリ評価を実解析的手法により示した.次に,その結果とcut-offテクニックを用いて,外部領域における線型定常問題について,同様な定理を証明した.外部問題に対しては,解の存在・一意性・評価のすべてが成り立つのは3/2<q<3のときに限ることが明らかとなった.従って,非線型のNavier-Stokes問題を解くためには,ローレンツ空間を導入する必要がある.そこで,外部領域における線型定常問題について,弱L_3/2空間での解の存在・一意性・評価を示した.証明は,実補間やパラメトリクスの具体的構成などにより行った.さらに,その線型問題に対する結果を用いて,同じクラスでの定常Navier-Stokes流を小さな回転角速度と外力に対して構成した.
|