研究課題
本年度はまず、構造定理を確立するための準備として、高階Painleve方程式とそれに付随するLax pairのStokes幾何の解析を河合隆裕(京大数理研)氏らと共同で行った。最初にLax pairのサイズが2で構造が最も簡明なI型の高階Painleve方程式の階層を考察し、この場合には高階Painleve方程式の(仮想的変わり点を含む)Stokes図形のほぼ完全な記述を得ることに成功した。続いて、大学院生の佐々木俊介君を中心として、付随するLax pairのサイズが3以上となる高階Painleve方程式の典型例である野海・山田方程式系の解析に取り組み、こうしたLax pairのサイズが大きい場合には、Lax pairの仮想的変わり点やnew Stokes curveが野海・山田方程式系のStokes図形の決定にも深く関わっていることが明らかにされた。このLax pairの仮想的変わり点が果たす役割は真に絶妙で、かつ非常に大域的である。こうしたLax pairの仮想的変わり点と高階Painleve方程式の接続公式との関連を論じることは、今後の重要な課題である。他方、構造定理に関しては、I型及びII型の高階Painleve方程式に対して得られていた第1種の単純変わり点における零パラメータ解(即ち、自由パラメータを含まない形式解)の第1 Painleve方程式への変換論を、付随するLax pairのサイズが大きい野海・山田方程式系にまで拡張することに成功した。なお、こうした研究成果を、平成17年6月にAngers(フランス)で開かれた「Theories asymptotiques et equations de Painleve」や、同年7月の京都大学数理解析研究所での「Recent Trends in Exponential Asymptotics」等の国内外でのいくつかの研究集会で報告した。以上の成果を踏まえ、来年度は高階Painleve方程式の自由パラメータを含んだ形式解の構成や、それに対する構造定理の確立に取組んでみたい。
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Asterisque No.297
ページ: 117-166
Seminaires et Congres (掲載予定)
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