研究概要 |
本研究の主要な目的は、Hardy, Gelfond, Thue, Siegel, Pisot, Salem等によって行われてきた増大数列の小数部分に関する研究を、これまで培ってきた超越数に対する有理近似の手法を用いて、さらに進展させることであった.中でも特に重要であると思われる未解決問題として、λθ^n(λ>0, θ>1)という数列の小数部分が0に収束するような超越数θが存在するかどうかを問う問題がある.そのような性質を持つ代数的数は、いわゆるPisot数と呼ばれる特殊な代数的整数に限られることが知られている.この問題の解決には至らなかったものの、どの程度早く小数部分が0に収束すればθがPisot数に限られるのか、という問題に対し、従来知られていた条件を改良することができ、Acta Arithmetica誌に発表した. 小数部が小さいということは、λθ^nが整数に近いということであり、有理近似の観点からすれば、θをa_{n+1}/a_nのような有理数で近似する問題と考えることができる.この点において、当初の計画ではPade近似に対応するものを考察し、関数の性質から、なんらかの知見が得られるものと期待していた.しかし、問題はかなり難しく、いまだ突破口を開く道具を見つけられない状態である.特に、この問題に関連する超越数に関する結果は、Boydの結果以外ほとんど知られていない.代数性と超越性の狭間を調べる興味ある問題であり、引き続き考察を続けていきたい.これと関連する問題としては、Mahlerの3/2問題がある.
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