研究概要 |
楕円型微分方程式系の境界値問題をD加群のことぼで定式化しその超局所オイラー類(特性サイクル)を構成するところまで,所期の目的は(技術的な部分を除いて)ほぼ達成できたと考えられる。以下にそのアイデアの概略を述べる。 境界付き多様体M上の楕円型微分方程式系Mを考える。Mの境界Nへの引き戻し(接方程式系)M_<tan>を考え,境界上の微分方程式系NとD_<N->準同型α:N→M_<tan>があるとする。この境界値問題が(またはαが)楕円型であるとは,αがε_N〓Nからε_N〓M_<tan>のある連接剰余加群M^+_<tan>(実際には直和因子になっている)への同型を引き起こすことであると定義する。(ε_Nは境界N上のマイクロ微分作用素のなす環を表わす。)考えている境界値問題が古典的なSchapiro-Lopatinski条件を満たしている場合は上の意味で楕円型である。このままだとまだ通常の代数的な扱いが難しいので,何らかの環の上の加群(の導来圏の対象)としてこれを捉えたい。そのために環BDをD_M〓D_<N→M>〓D_Nと定義してBDについて双対をとると,Bをある2次の行列環として,環D_M〓B上の加群の導来圏D^b(D_M〓B)の対象B(M,N)が得られる。一方,定数層の対(Z_M,Z_N)からB加群の層B_<M,N>が得られるが,B(M,N)とB_<M,N>の対に対してLefschetz-Grothendieck-Kashiwaraの対角線の方法を用いれば,αが楕円型であるという条件のもとで(超局所)オイラー類が定義されると思われる。ここで定義したオイラー類による指数定理の記述については,構成が自然なことから,通常の図式追跡で上手く証明できると予想される。
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