研究概要 |
1.時間遅れをもつ非線形差分方程式を考察し,すべての非自明解が振動するための十分条件や振動しない解が存在するための十分条件を与えた。対象とする差分方程式を同値変換し,その方程式系に対する相平面解析を用いて,これらの結果を証明した。 2.リエナール型方程式系の原型は1928年にフランス人物理学者のA.Lienardによって初めて定式化され,微分方程式の定性的理論の発展に重要な役割を果した。本研究では,非自励な場合のリエナール型方程式系の零解が大域的漸近安定になるための十分条件を与えた。また,一般化されたリエナール型方程式系にホモクリニック軌道が存在するにはそのような条件が必要かについて研究した。その実用的応用の一つとして,アリー効果の影響を受けるガウゼ型捕食者・被食者系において,ホモクリニック軌道が存在するための必要十分条件を与えた。 3.線形微分方程式の解空間は同次性と加法性(即ち,解の任意定数倍も解であり,二つの解の和も別の解である)を持っていることは良く知られている。過去20年間において,半分線形微分方程式の研究がかなりの注目を引いてきた。半分線形微分方程式という用語は,この解空間が上記の二つの性質のうちの一つ,つまり,加法性だけを持っていることに由来している0また,半分線形微分方程式は1次元p-ラプラシアンをもつ微分方程式とも呼ばれる。本研究では,非自励な半分線形微分方程式の解の漸近的挙動と零解の大域的漸近安定性について論じた。 4.自己随伴微分方程式,半分線形微分方程式,1次元p-ラプラシアンや摂動項をもつ非線形微分方程式,楕円型方程式などの種々の微分方程式の振動問題を扱った。すべての非自明解が振動するための十分条件や振動しないための十分条件を提示した。得られた諸定理はこの問題に対する従来の多くの結果を拡張した。主な手法は各方程式と同値な方程式系に対する相平面解析である。 5.リュナール型方程式系と1次元p-ラプラシアンをもつ微分方程式を組み合わせて,p-ラプラシアンをもつリエナール型方程式系を考え,この新しい方程式系が極限閉軌道を少なくとも一つもつための十分条件を与えた。主な結果は相平面解析とポアンカレーベンディクソンの定理を用いて証明した。
|