研究概要 |
2004年のJournal of Mathematical Physicsに出版されたE.Bruening教授との共著の論文「Relativistic quantum field theory with a funcamental length」はUltrahyperfunctionの理論を用いれば、基本的長さを持つ場の量子論が定式化できることを示した論文である。ここでの基本的長さ1とは、1以上離れたものは区別できるが、1より近づいた2つのものは区別できないという性格を持った長さのことである。このような理論はdistributionやhyperfunctionを用いては定式化できず、ultrahyperfunctionを用いて初めて定式化できるものである。 基本的長さの理論の歴史は古く1930年代から提唱されてきた。その理由は次のようなものである。相対性理論で重要な役割を果たすのは光速度cであり、量子力学ではPlanckの定数hである。場の量子論は相対性理論と量子力学を結びつけたものであるから、相対論的な量子力学の方程式であるDiracの方程式にはcとhが含まれる。cの次元は[L/T]でhの次元は[MLL/T]である。これらを組み合わせるだけでは[L][T][M]の様な次元は出てこない。長さの次元[L]を持つ定数1を導入すれば、c,h,1を用いて残りの[T][M]は表すことができる。Heisenbergは「理論は長さの次元を持った定数1を含まねばならない」と考え1958年にPauliと共著のプレプリントで、後に宇宙方程式と呼ばれる場の方程式を提唱した。この方程式は長さの次元をもつ定数1を含んではいるが、その非線形性のために解くことが非常に困難である。 我々は宇宙方程式と同様に長さの次元を持つ定数1を含んで、なおかつ解けそうなモデルを考察した。南アフリカDurban大学のBruening教授と共同で書き上げたプレプリント「HEISENBERG'S FUNDAMENTAL EQUATION AND QUANTUM FIELD THEORY WITH A FUNDAMENTAL LENGTH」では、このモデルが標準的な理論の枠内では解けないが、我々の論文Relativistic quantum field theory with a funcamental lengthの枠内で解けることが示された。そしてこのモデルに含まれる長さの次元を持つ定数1がまさにこの論文で定式化されたところの「基本的長さ」であることが示された。
|