研究概要 |
今年度は人口動態論に由来する非線形楕円型境界値問題に付随した,線形化固有値問題の正値主固有値の性質について調べた.この正値主固有値は方程式に含まれる重み関数についてのある付帯条件の下でただ一つ存在して,対応する非線形問題の正値解の分岐点を特徴付ける重要な値である. 本研究においては,正値主固有値の発散条件を方程式に含まれる重み関数の言葉で求めた.ディリクレ境界条件の下では既にカントレルとコスナーが1989年に発散のための必要十分条件を求めている.本研究ではノイマン境界条件の場合を考察した.まず始めにノイマン条件の下では一般に同様の結果が成立しないことをある反例を挙げて示した.そしてノイマン条件の下での発散のための十分条件をカントレルとコスナーが与えた典型的な例を含む形で求めることができた. 証明の手法は正値主固有値の変分的特徴付けによる.ディリクレ条件の場合に強力な道具であったポアンカレの不等式のノイマン版をいかに上手く援用するかが証明の困難を克服するカギであった.正値主固有値に付随した固有関数をその平均で一意分解して,ディリクレ条件の場合には現れない余りの項を適切に評価することが解決の本質的なプロセスであった. 研究経過報告を以下のとおり行った: 第5回ISAAC国際会議(カターニア大学数学教室,イタリア;平成17年7月), 日本数学会年会函数方程式論分科会一般講演(中央大学理工学部;平成18年3月) なお,今年度の研究成果を学会誌,エディンバラ王立協会数学紀要に学術論文として投稿した.現在これは査読中である.
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