研究課題
基盤研究(C)
電気伝導体の表面での電位、電圧の測定値から物体内部の電気伝導度を再構成する逆問題の数学的研究を行った。これはある種の楕円型方程式の解の境界値から方程式の係数を決定する問題として定式化される。実際の問題としては医学においては患者の人体表面に電極をおき、微弱な電流を計測することによって悪性腫瘍の位置を決定する問題、あるいは工学においては、物質内部の様子を表面電位から知る非破壊検査等があり、応用上も極めて重要である。まず物体内の電気伝導度が一部分で不連続的に大きくなっている場合に、不連続部分の位置を特定する理論を完成し,数値計算アルゴリズムを発見した。海外研究協力者であるSamuli Siltanen博士と、国内から井手、仲田博士を筑波大学に招聰し、共同研究を行った。2次元の長方形領域、半円形領域を例に取り上げ、解析的に得られた式からの数値計算、有限要素法による計算を行った。結果は良好なものであり、この方法の有効性が実証された。また電気伝導度の逆問題に関する再構成法でとしてよく知られたBarber-Brownのアルゴリズムに関する数学的理論を構築した。これはその有効性にもかかわらず理論的背景が未知であった問題であり、数学的原理が発見されたことは非常に意義深い。そのためには3次元双曲空間内のホロ球での境界値逆問題の研究が本質的な役割を果たした。特に、ホロ球内部での双曲ラプラシアンのグリーン函数の性質、ならびにスペクトル的性質・ラドン変換の反転公式が重要であった。結果の一部は日本数学会、理論応用力学連合会、および英国で開催された逆問題に関する国際シンポジウムで発表された。篁はゴンザレスとともにアフィングラスマン多様体上でのラドン変換の研究を行った。亀高はソボレフの不等式に関する最良定数の研究を行った。これらの研究を発表し、また情報交換をするために筑波大学において「数理科学セミナー」を開催し、国内研究者20名、外国人研究者5名による逆問題の研究集会を行った。
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