研究概要 |
Kahler多様体Mの擬凸部分領域D上の関数論と,Dの境界Sの微分幾何学的な性質との関連を,与えられたケーラー計量から決まるSまでの距離関数のLevi formの研究を通して明らかにすることが主な目的である.一般的には,Mが非負の正則双断面曲率を持ち,Sが弱擬凸あるいはLevi flatな場合のLevi問題,及び,境界としての実または複素曲面そのものを研究したいのであるが,まず,多様体MやDの境界Sの曲率がゼロの場合に,研究課題の解決のための最初の問題が多く含まれている.そこで16年度は,Mの曲率がゼロの場合,すなわちDがEuclid空間C^nの場合を調べ,次の結果を得た. (1)MがC^nの複素部分多様体の場合に,Mまでの距離関数のLevi formをMの定義関数を用いて具体的に書き表した.その結果,Levi formの退化条件と複素曲面Mの展開可能性の間には,密接な関係があることが分かった.しかし,Mの余次元が2以上の場合にはそれらの条件は一致しないという例もある. (2)MがC^2の実超平面の場合に,Mまでの距離関数のLevi formをMの定義関数を用いて具体的に書き表した.その結果,複素2次元トーラスの擬凸領域で,Steinにならないものは,本質的にはGrauertによって指摘されたタイプのものしかないことを示した.このことは,トーラス上のLevi平坦超曲面の分類問題の基礎となっている.
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