研究概要 |
非可換調和解析における実Hardy空間を、Strum-Liouville型の調和解析において構成し、その有効性を調べるのが本研究の目的である。本年度は、Strum-Liouville型の基本となるFourier-Jacobi変換において実Hardy空間の有効性、とくに特異積分や補間法に関する研究を行った。具体的には古典調和解析におけるLittlewood-Paler g-関数およびLuzin area-関数の有界性を調べ、その過程において補間法を用いた。これらの作用素はユークリッド空間R^n上では、最大定理、すなわちp>1に対して強有界、p=1のとき弱有界となることが知られており、さらに(H^1(R),L^1(R))有界である。また、対称空間G/KやFourier-Jacobi型の調和解析においても最大定理が成立することは、Sten, Lohoue, Ankerの一連の研究で知られていた。しかしながら、p=1のときの、(H^1,L^1)有界に相当する定理は得られていなかった。本研究では先に導入した実Hardy空間H^1(G//K)を用いることにより、Littlewood-Paley g-関数およびLuzin area-関数の(H^1(G//K),L^1(G//K))有界性を示した。証明の方法は、H^1(G//K)の定義が、Fourier変換および球Fourier変換を用いたH^1(R)の引き戻しであることを利用し、G上のLittlewood-Paley g-関数およびLuzin area-関数のH^1(G//K)上での有界性を、R上の対応するg-関数およびarea-関数の(H^1(R),L^1(R))有界性に帰着させることによってなされた。また、同様の方法により、H^1(G//K)とL^2(G//K)の間で補間法が使えることも分かった。対称空間G/KやFourier-Jacobi型の調和解析において、弱L^1とL^pの補間法は知られていたが、H^1とL^pの補間は知られていなかった。今後、これらの結果をStrum-Liouville型の調和解析に拡張していきたい。
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