研究概要 |
4年間の研究において非可換調和解析における実ハーディ空間の特徴付けとその応用について有意義な成果が得られた。当初に対象とした非可換調和解析の典型例は実ランク1の半単純リー群上のK両側不変関数であったが、研究が進みヤコビ解析さらにはStorm-Liouville hypergroupへとその成果を拡張することができた。 実ハーディ空間H^1(Δ)は最大関数を用いて定義される。研究ではH^1とユークリッド空間における実ハーディ空間H^1(R)との関連を具体的に求めることによってその特徴付けに成功した。ホイントとなるアイデアはアーベル変換が分数積分作用素によって具体的に書けることに注目し、その逆演算を通常の分数微分で記述できたことである。H^1のこの特徴付けにより次に述べる積分作用素の有界性への応用が容易となった。 H^1(Δ)の応用としてPoisson最大関数、Littlewood-Paley g-関数、Lusin area関数の(H^1(Δ),L^1(Δ))強有界性を証明することができた。p=1のときの強有界性は全く知られていなかったので大きな成果と考えている。証明の方針は上述のH^1の特徴付けを利用し、非可換調和解析におけるこれらの積分作用素の有界性の議論を、アーベル変換を用いて可換なユークリッド空間の場合に帰着させることである。この過程において多くの積分作用素はユークリッド空間のときと同様の有界性を持つものと期待される。しかし今回の研究でLusinのarea作用素Sの(H^1(Δ),L^1(Δ))強有界性が、Sを定義する非接領域の形状(領域の角度)に影響されることが分かった。対象とした非可換調和解析の重み関数が指数増大度を持つことによる。このような非可換調和解析の特有の現象を見つけたことも大きな成果と考えている.
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