研究概要 |
n次元空間における放物型・双曲型(非線形退化放物型)方程式に対する初期値・塊界値問題のエントロピー解とkinetic解の研究および1次元空間における非線形n×n放物型方程式系に対するコーシー問題の時間大域解とその減衰について研究を行った。 放物型-双曲型方程式については、前年度までに本研究で得られたL∞解に対する結果を、非有界なL1解に拡張する研究を行った。研究の方法はkinetic formulation法(kinetic理論)を中心とし、実解析的、測度論的、関数解析的手法を用いた。詳しくは、退化放物型方程式に対する初期値-境界値問題の有界なエントロピー解(L∞解)に対する比較定理は、本研究によって証明された。これまでは、比較定理より弱いL1縮小性定理がCarrillo(1999), Massia et al.(2002)によって、Kruzkohの2変数法を用いて証明されていたが、本研究ではP.L.Lions等により開発されたkinetic formulation法を初期値-境界値問題に適用できるように改良し、比較定理を証明した。研究の最終年度は、この結果を非有界な再正規化エントロピー(renormalized)解に拡張した。再正規化エントロピー解は、完全退化型すなわち、1階双曲型方程式の非有界なエントロピー解の研究において、Benilann等により導入された概念であるが、本研究でこれを退化放物型方程式の非有界なエントロピー解の研究に拡張し、再正規化エントロピー解(L1解)の比較定理と存在定理の証明を行った。 非線形n×n放物型方程式系ut+A(u)ux=uxxについては、コーシー問題をA(u)がn個の異なる実固有値をもつ場合を研究し、初期値の全変動が小さい仮定の下で、時間的大域解の存在と解の減衰評価を調べ、非線形n×n保存型方程式系の研究への試みを図った。
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