自然現象の時間発展を記述するモデルとしてC*環上の流れについての研究は古くからある。流れに課すべき性質としての内部近似可能性は、ハミルトニアンが観測量であるという事実の反映として同意されているが、これに対する一般論は十分に探求されてきたとはいえない。(C*環がAF環である場合に、30年前にもなる境氏による先駆的仕事がある。)本年度はこの問題を取り上げたのだが、目論んでいた成果をあげたとはいいがたい。 商C*環から元の(可分な)C*環への「持ち上げ」の問題は解きえた。このために、内部近似性において可能な2種類の定義のうち強いほうを用いるが、そのふたつの定義が本当に異なっているのか見かけだけのことなのかは決定できていない。(知られている例はすべてこの強い性質を保持する。)これに類した多くの問題も未解決であるが、局所的な内部近似可能と大局的なものとが同値であることは確かめえた。
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