世界的に研究の進展を見せる界面を伴う非線形現象のうちで、研究計画最終年度の平成18年度は、平成17年度に続き主に次の二点に関して研究を進めた。1.相分離現象の分岐現象の解析。2.数理ファイナンスに現れる行使界面挙動の研究。 まず相分離現象の分岐現象の解析であるが、平成16年度、17年度に引き続いて江口教授(福岡大)の提唱したモデル方程式系、EOM系の解明に取り組んだ。これは相分離現象を、考えている物質の密度に対する方程式と、系に内在する秩序変数に対する方程式との係わりにおいて説明しようとした方程式系である。既に定常解の構造を詳しく調べ、界面、すなわち遷移層が現れることを見た。平成17年度の主要結果であるこの定常解に対する分岐現象の解明は、中村教授(日本大)中村助手(電通大)との共著論文として公表された。査読者の評価も高かった。これは、EOM系は温度変数を主パラメータとするが、この主パラメータに対する分岐を詳しく調べたものである。単純な定常解では単純な分岐しか現れないが、やや複雑な定常解からはやはり複雑な分岐現象が観察された。その他では、力学系の観点からより詳しい解析を行う準備をした。しかし、論文をまとめるような水準まで研究は進まなかった。この研究資金での活動は終了するが、研究そのものは平成19年度以降も続行する。 次に数理ファイナンスに現れる行使界面挙動の研究であるが、まず高岡准教授(一橋大)の提唱したモデルから導かれる偏微分方程式の厳密解を求めた論文が出版された。さらに取引費用を考慮した場合のBlack-Scholes偏微分方程式について研究し、解の存在等示した。平成18年9月のスロバキアにおける国際研究会で発表し、様々な指摘を得てさらに推敲した。論文は投稿中である。
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