研究分担者 |
大鍛治 隆司 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20160426)
國府 寛司 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50202057)
盛田 健彦 広島大学, 大学院理学研究科, 教授 (00192782)
川下 美潮 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80214633)
小池 達也 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80324599)
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研究概要 |
物体による波動方程式の散乱問題に関する,修正版Lax-Phillips予想解決へのブレイクスルーを見つけ出すことが本件研究課題の中心であった.結論から言えば,今尚,ブレイクスルーを見つけ出すことに成功していない.しかしながら,この問題の重要性と困難さの本質の理解を一段階深めることができた. 修正版Lax-Phillips予想に関わる典型的問題として,幾つかの狭義凸な物体による散乱問題を取り上げた.WKB法による漸近解を構成して散乱された解の挙動を調べた.その挙動の中心的部分として,古典力学系のゼータ関数が現れる.この事実は,散乱行列と密接な関連を持っていることを示唆している.それらの間の関連の明確化を試みたが,本質的困難があることが認識されるに留まった。それは,量子力学における問題を,高周波における古典力学による近似を用いて考察する場合,その近似の有効的時間幅がその周波数を越えない範囲に限られることである.従って,散乱理論においては,過去における時間無限大での状況から,未来における時間無限大への状況の変化を調べることが中心問題であるので,上記の方法の有効性は自ずと制限を受けて,いまだに本質的関連をつかみ出すことが出来ていない. しかしながら,我々が既に示したように,ゼータ関数の特異性の存在から修正版Lax-Phillips予想の有効性を導き出せることから,2つの対象の本質的な深い関わりの存在することも隠れも無い事実である.この研究期間において,修正版Lax-Phillips予想のブレイクスルーを見つけ出せなかったとは言え,上述のごとくこの研究を通して,困難点の理解は非常に深まり,解決への一歩をなした.今後何歩を歩めば解決に至るかは分からないが,問題の重要性に鑑みこの歩みを続ける必要を再確認した.
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