・昨年度の研究実績の概要に述べたように、N_1=7の場合のForrester予想の成立を示すのに我々の当初の方針は、ある種の対称多項式をJack(あるいはMacdonald)多項式で展開したときその一部分の展開係数が消えることをMacdonaldの微分作用素を用いて示すであった。しかしN_1=7になると、予想されたことだが、この展開の項数が膨大となりN_1が6以下の場合のように容易にはいかず、今のところ途中までで中断している。計算を続ける上での何らかの見通しを見いださない限りこのやり方でこれ以上すすむのは非常に難しい。 ・本年度は主に(非対称)Koornwinder多項式に関する研究を行った。具体的には、このKoornwinder多項式に付随する二重アファインHecke代数の構造、特にその中の一般化された対称化作用素と一般化された交代化作用素の満たす性質を調べた。これは以下の理由による。即ち、元々の目標である(Baker-)Forresterの予想は一部分の変数に関する‘差積'の取り扱いが問題となるのであるが、この様な差積は一部分の変数に関しての交代化作用素-これは二重アファインHecke代数のいわゆるCherednik作用素から簡単に構成出来る-をKoornwinder多項式E_λに作用させて作ることが出来ると予想される。A型の場合から類推するに、この部分は一般に‘差積'とKoornwinder多項式E_μとの積になることが予想され(指標公式のアナロジー)、一方Koornwinder多項式のノルム公式は既知であるから、一部分の変数に関する‘差積'に関するある種の積分公式が得られるはずである。現在この様な方針で、交代化作用素を作用させた場合の具体的な形を計算しているところである。
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