平成16年度は戸田格子の量子化を考えるにあたりその等位曲面の位相的性質に関して研究を行った。量子化戸田格子の積分可能性の証明のためヤコビ元のHassenberg行列の等位曲面のコンパクト化が種数nのトーラスになることを用いた。一方通常の戸田格子をふくむフル・コスタント戸田格子の等位曲面の位相的性質にはまだ分からないことが多い。例えばその等位曲面は旗多様体のブリューワー分解に対応したセル分解をもつがオープンセルでない点を初期値にもつ戸田フローの研究はあまりされていない。平成16年度はこうした研究をおこなった。旗多様体のセル分割は位相的に不変な性質である。一方セル分割はτ関数のゼロ点という解析的な表示をもつ。フル・コスタント戸田格子はN-1個の独立したτ関数を持つ、ただしNはラックス行列のランクである。セル分割の位相普遍性よりτ関数のAdjoint表現に関するsemi-invariant性が従う。よってτ関数の比をとればAdjoint不変な関数が構成できる。このAdjoint不変な関数とはなんだろう。τ関数は戸田格子の等位曲面の上の複素直線束とみなすことが出来る。実は新しいAdjoint不変な関数はこの複素直線束の変換関数とみなすことができる。等位面上の複素直線束、およびその変換関数を考えたのだが、では局所自明近傍はどのように定義されるのだろう。この問いに答えるため一旦フル・コスタント戸田格子から離れて一般のGL(N)のブリューワー分解を考えよう。GL(N)自身のブリュワー分解のセルをその一番大きなセルの中に解析的部分多様体として引き伸ばすことが出来る。その引き伸ばした部分多様体の開近傍を自明局所近傍として選ぶのである。この研究は幾何学的にはN(N-1)/2次元の旗多様体をN(N-1)次元の実空間へのラグランジェ多様体としての埋め込み、また微分方程式からは小さいセルから出発した戸田格子の解に有限時間の寿命を与え、その間に解の研究を行うことにあたる。従来小さいセルと戸田格子の解の研究は一番大きなセルを出発した解の極という一点のみでしか研究できなかった。
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