研究概要 |
多孔質中の圧縮性流の方程式系は、ラグランジュ座標で、流体の速度と比体積を未知関数とする連立方程式系としてかける.それは非体積の消散型波動方程式ともみなされ、その解の漸近挙動は,よく知られたダルシーの法則から、対応する拡散方程式の解に漸近する.HsiaoとLiuの研究を進展させた研究から派生して、2階消散型波動方程式のコーシー問題の解の拡散現象という新たな視点からの研究が数年前から始まった.それらの研究を引き続き行い、本年度は、特に初期データが必ずしも可積分とは限らない場合を考察した.対応する拡散方程式の半線形問題については、空間方向の減衰の指数と半線形項の指数に応じて新しい臨界指数が現れ、優臨界、臨界、劣臨界指数の場合に、それぞれ、小さいデータに関する時間大域解の存在と減衰、有限時間内の正値解の爆発等が、LeeとNiによって得られている、前年度の研究で、優臨界の場合に望むべき結果が得られ、まとめて投稿した論文は学術雑誌に掲載された.引き続き、臨界、劣臨界指数の場合の正値解の爆発や爆発時間の評価についても一部得られているが、望ましい結論にまではもう少しの研究の継続を要する. また、これらの結果も含め、この数年間に得られてきた2階消散型波動方程式の解の拡散現象について、「消散型波動方程式の解の拡散現象」のタイトルで、その考察の動機から、研究の成果、さらに、関連の結果や未解決の問題、今後の研究の方向まで含め、「論説」としてまとめた.これは、日本数学会発行の雑誌「数学」の「論説」の原稿としてまとめられたもので、同雑誌に投稿された.
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