本研究の主な目的は、超高エネルギー(TeV)ガンマ線観測により銀河系内の宇宙線の起源の解明を進めることであった。CANGAROOチームは、超新星残骸(SNR)RX J1713.7-3946についで、銀河中心とSNR RX J0852.0-4622からTeVガンマ線を検出した。これらの天体で、銀河宇宙線が加速されていることを検証するためには、TeVガンマ線領域のデータとともに、電波やX線の観測データと、多波長にわたる非熱的な輻射モデルの構築が不可欠である。本研究では超高エネルギーガンマ線天体のモデルの構築を行うとともに、X線天文衛星Chandraによって観測されたSNRの非熱的なX線フィラメントの理論的解釈も行った。また、PeV付近の宇宙線の起源が、銀河系外起源の宇宙線が銀河風でモジュレーションを受けたものであるという仮説をたて、数値シミュレーションによってモデルを構築し、PeV付近の宇宙線の起源について議論した。また、CANGAROOチームは、CANGAROO-IIIのステレオデータの解析において、新しい手法を導入し、過去の手法も併用することで信頼性を高めながら、解析を進め、H.E.S.S.グループによって主張されたVelaパルサー星雲からの拡がったTeVガンマ線の信号を確認することができた。本研究費により、このようなCANGAROO-IIIのステレオ観測データの解析を行うための環境を整備することができた。また、南オーストラリアのウーメラに出張し、観測とCANGAROO-III望遠鏡の保守などの作業を行うことができた。
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