研究課題
平成17年度の目標は、(1)Ia型超新星爆発までの連星系の進化の数値シミュレーション方法の確立、および、(2)Ia型超新星爆発時の炭素燃焼波面の対流不安定による伝播の数値シミュレーション方法の確立、の二つであった。(1)の連星系の進化については、初期の目的とは別な新しいテーマが浮上し、その解決を見ることができた。それは、連星の一方の星から、白色矮星へガスがアクリーションする場合に、質量降着率が比較的小さいと、水素ガスの核融合反応が定常的には起こらず、間欠的にフラッシュを起こす。これが新星爆発である。この新星爆発の光度変化を再現する新しい理論を構築することができた。その本質は、新星爆発に伴って飛ばされるガスからの自由-自由遷移光が連続光の光度曲線を決定するということである。新星爆発の私たちのモデルに自由-自由遷移光による効果を取り入れることで、観測と直接比較ができる、質の高い光度曲線が求められた。この新しい光度曲線と実際の新星の観測を比較し、古典新星の白色矮星質量を決定することができるようになった。また、このようにして得られた新星のモデルを元にして、長年の未解明の問題である、超エディントン光度の問題に、ひとつの解決をあたえることができた。現在、これらを発展させて、すべての古典新星の光度曲線を統一的に説明することのできる光度曲線モデルを構築中である。観測と理論の融合により、Ia型超新星の親星のモデルに大きな制限を与えることが期待される。(2)のIa型超新星爆発時の炭素燃焼波面の対流不安定による伝播の数値シミュレーションについては、2次元軸対称モデルにおける計算コードを完成させ、さらに回転の効果を入れ、2.5次元の計算コードも完成した。このコードで爆発する白色矮星が高速に自転している場合の計算を行うことができた。まだ、確定的な結果ではないが、回転の効果は、燃焼によるバブルの浮き上がりをコリオリ力により捻じ曲げる効果として働くので、燃焼波面の伝播が抑制されるようである。来年度においては、より多くのモデル、より細かい計算格子を用いることで、確定的な結果を得ることを目指す。
すべて 2005
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