研究概要 |
Wolf-Rayet星のように半径が小さい星の爆発では衝撃波が表面を通過した直後に外層が相対論的速度にまで加速されることが知られている。このような加速現象に引き続き起こる星周物質との相互作用に関して、破砕反応などによる軽元素合成とそれと並行して起こる電子散乱やイオン化によるエネルギー損失を考慮した運動学的観点と、流体力学的な相互作用を記述する自己相似解を探す研究を行った。 最近、超金属欠乏星の表面で検出された^6Liの起源とこの加速現象との関連を研究し論文にまとめて発表した。重元素をほとんど含まないガスからできている大質量星の進化に関する最近の理論計算によると、太陽質量の40倍以上の質量を持った星はその外層のほとんどを星風で失い、表面には薄いHe層とC-0層がむき出しになり半径の小さい星になった状態で超新星爆発を起こすことが示唆されている。He層ではCNOサイクルの結果Nが大量に含まれている。このような星の周りには同じようにNを多量に含んだHeを主成分とする星周物質とその外側にHが主成分の層が分布していると考えられる。すると加速されたHe, N, C, 0が星周物質に含まれるHe, Nとぶつかって破砕反応を起こすので、従来考えられていた破砕反応とは異なるN+He→Beや融合反応であるHe+He→^6Liが軽元素合成にとって重要な反応になって来ることを見出した。表面でのHe残存量とNの組成比をパラメータとして軽元素の合成量を計算した結果、星の進化計算が示唆するパラメータの値と似た値を用いることで観測された^6Li/0とBe/0などの組成比を再現できることがわかった。また、このような過程で合成される^7Liの量はビッグバンで合成される量よりかなり少ないことがわかった。これらの結果をまとめてThe Astrophysical Journalに発表した。 衝撃波が星の表面を通過する前後での加速現象に関して、先に行った解析的な研究では記述できない球対称性を逐次近似によって取り入れた定式化を行い、その妥当性と限界を数値計算で、The Astrophysical Journalに発表した。さらに、核反応や放射冷却を伴う衝撃波が星の表面を通過するときの自己相似解も導出したので、その結果をThe Astrophysical Journalに投稿し受理された。また、これに引き続く現象として、相対論的に加速された後自由膨張している物質が星周物質と衝突した時の進化を記述する自己相似解も導出し、結果をThe Astrophysical Journalに発表した。
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