多くの大スケールジェットのX線放射機構は、FRI型のジェットではシンクロトロン放射、FRII型のジェットでは逆コンプトンで解釈される。さらにFRII型の場合、種光子としてはシンクロトロン光子よりも宇宙背景放射と考えられる。この場合大スケールジェットも大きなローレンツ因子をもって強い相対論的ビーミング効果を示していることになる。また、磁場はかなり弱くなる。しかしながら、この結果は一層近似の枠内では定性的には正しいが、詳しく検討すると内部構造の影響が無視できないことがわかってきた。本年度はCen Aについて詳しい検討を行い、大スケールジェットではジェット表層部分と周囲との相互作用での粒子加速が大きな役割を果たすことを明らかにした。また、1959+650で観測されたTeVガンマ線のorphan flareについてジェット表層での反射モデルを提案した。これも表層部分での粒子加速が非一様であることを示唆している。 また、関連する物理的過程として以下の研究を進めた。 1.輻射スペクトルから得られる物理状態と内部衝撃波の力学構造とをあわせて考えることにより、ジェットには観測される相対論的電子の質量密度の千倍程度の質量密度の物質が存在していることを明らかにした。 2.偏波観測やジェットの見かけの構造に対する相対論的ビーミング効果についてさらに検討を進めた。 3.遠方のブレーザーからのTeVガンマ線の検出を使って宇宙赤外線背景放射強度に強い制限を与えた。
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