研究課題
基盤研究(C)
磁束絡みを表す磁気ヘリシティは高温プラズマにおけるよい保存量であるため様々な電磁流体現象で注目されている。本研究では、太陽から太陽コロナを通して惑星間空間に至る磁気ヘリシティのダイナミクスを明らかにするための研究を、観測とシミュレーションの両面から実施した。第1に、太陽光球面を通した磁気ヘリシティ流束の様々な測定方法について米国、韓国の研究者らと協力しベンチマークテストを実施した。その結果、草野らが提唱したように誘導方程式を利用することによってその信頼性が上がることが定量的に確認された。第2に、2006年に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」による太陽磁場詳細データを用いて太陽コロナ磁場の3次元構造を再現するための先進的方法論をマルチグリッド法とmagnetofrictional法の組み合わせに基づいて開発した。さらに、これを用いて大規模(Xクラス)フレア直前における磁力線3次元構造を再現することに成功すると共に、その構造がフレア発生時の発光形態を良く説明することを確認した。第3に、本研究によって開発された先進的な電磁流体力学計算スキームHLLD法の拡張を実施し、新しい磁場の発散除去法を創出すると共に、より一般的な状態方程式の導入、急激に変化する天体双極子磁場による誤差の除去に成功した。第4にこのHLLE法を一般曲線座標に適用し、全球コロナモデルと3次元磁気圏モデルをそれぞれ完成させた。さらにこれを用いてフレアからコロナ質量放出(CME)に至る大規模MHDシミュレーションを実施し、CME発生が太陽コロナへの磁気ヘリシティ入射量のみならず磁気ヘリシティ入射の空間構造とも密接に関係していることを初めて明らかにした。また、磁気圏太陽風相互作用の精密シミュレーションも実施し、磁気圏内部への磁気ヘリシティ入射解析に必要なモデル開発を実現した。
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