Be/X線連星系における中性子星への降着流の振舞いを調べ、軌道周期の間隔で繰り返すX線アウトバーストの起源を理解するために、3次元SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)シミュレーションを行った。シミュレーションは、短周期の系に対して、中性子星への降着流だけを対象としたものと、系全体(Be星ガス円盤の進化・Be星ガス円盤から中性子星への質量輸送・中性子星への降着のすべてを含む)を対象としたものの2種類を行った。Be星ガス円盤の赤道面は連星の軌道面上にあると仮定した。また、簡単化のために、Be星ガス円盤と降着円盤は等温であると仮定した。 これらのシミュレーションから次の結論が得られた。 1.軌道離心率の大きくない系では、中性子星のまわりに持続的な降着円盤が形成される。中性子星への降着率はBe星からの質量輸送率よりも小さく、降着円盤はゆっくり成長する。降着円盤中には、近星点通過のたびに、Be星から輸送される物質のラム圧により一時的に一本腕密度波が励起される。この密度波の内側方向への電波に伴い、中性子星への降着率は増加する。 2.軌道離心率の大きな系では、中性子星のまわりに一時的な降着円盤が形成される。中性子星への平均降着率はBe星からの平均質量輸送率と等しく、降着円盤は近星点通過直後に形成され、次の近星点通過時までに消滅する。中性子星への質量降着率は近星点通過直後に極大となり、その値から求められるX線光度は周期的なX線アウトバーストの典型的な光度と一致する。このことは、周期が短く離心率の大きな系では周期的なX線アウトバーストが起こりやすいことを示している。
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