本研究は、新星にみられる超エディントン光度(従来の理論的光度の上限を超える光度)がなぜ実現するのかを基礎的なところも含め研究する計画である。本年度はまず、その手がかりを得るため、光度がピークに達する前に一定光度をとる古典新星2つ(V723 CasおよびV463 Sct)の光度曲線解析をした。その結果、一定光度の部分がちょうどエディントン光度に等しく、それ以上の光度の部分が超エディントンに相当することがわかった。また古典新星V1494 Aglについては、古典新星ではじめて降着円盤が存在することを解明し、今後の光度曲線解析の大きな手がかりを得た。さらにヘリウム新星の光度曲線を計算し、エディントン光度の天体の物理的性質も調べた。次に超エディントン光度を実現するための物理的機構である密度むらのある大気の物理的性質を系統的に調べた。新星の大気に密度のむらがあると、平均的な吸収係数が減少するため、光度は大きくなる。しかしガスの速度は大きくならず、質量放出率は大きくなる等がわかった。この機構が働けば光度曲線はピークが大きく、速く減光する。次に具体的な天体の光度曲線を計算するためには距離を特定しなければならない。そこで本年度はマゼラン星雲に出現した4つの古典新星について、超エディントン光度の部分をどのように理論的に解析できるか調べた。これらは4つとも超エディントン光度であり、紫外線の観測と可視光の観測がそろっている。これら両方の光度曲線を合わせるような理論を導くための制限を得ることができた。
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