研究概要 |
本年度は超エディントン光度の理論を確立するために必要な波長観測のフィッティングの確立、紫外線およびX線観測者との研究協力体制の確立、および超エディントン光度モデルの計算を行った。まず多波長観測のデータがそろっている天体(V1974Cyg, V1668Cyg, V1500Cyg)について光度曲線解析の方法を確立した。新星風理論から求めた光度曲線と観測を合わせるためには、可視光の観測はV等級ではなく輝線の影響を除けるy等級が適していることがわかった。また紫外線は一般の波長では黒体輻射からずれるが1455Åの連続光の光度曲線を使えば正確に合わせることができる。X線は黒体輻射の近似で良い。赤外線可視光はfree-free emissionによる放射で良く近似できる。これらの多波長観測のデータは一つの理論モデルで同時に合わせることができる。これをV1974Cygほかの天体に適用し、白色矮星の質量を正確に決めることができた。またカサッテラ教授とは新星の紫外線(1455Å)の共同研究を広く行うことになった。X線の観測ではオリオ教授と研究協力をすることとなった。 超エディントン光度の理論的な基礎研究では、シャビブ・モデルに基づく吸収計数の変化をパラメタとして、いろいろな新星の光度曲線を計算し、可視光とX線、紫外線などのデータを同時に再現できる条件を求めた。これは超エディントン光度になる物理的条件と深く関係していると考えられる。 また平成18年2月12日に回帰新星RS Ophが爆発したため、X線強度の予測をした。光度曲線解析に必要なX線とy等級のデータが求まれば、理論から白色矮星の質量を求めることができる。現在ある4つのX線天文衛星がこの論文に基づいて観測を実行してくれることを期待する。
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