研究第二年度にあたる本年は楕円銀河の形成途上の姿を明らかにすることを中心に研究を進めた。既に昨年度において、すばる望遠鏡による光学撮像と欧州南天天文台(ESO)のNTT望遠鏡による近赤外線撮像によって、BzK銀河(1.4<z<2.5)を多数同定してあったが、本年度はそれらの銀河には二つの種類があることを明らかにした。即ち、星形成を行っている銀河(sBzK)と静的に進化している銀河(pBzK)である。前者は楕円銀河の形成途上の姿であり、後者は既に星形成を終了した楕円銀河である。これらの銀河には10^<11>太陽質量という大質量のものが多数あり、銀河の星質量の集積が既に宇宙進化のこの段階で終了している場合が希ではないことを示唆する。その物理量の推定から星形成を行っている銀河はダストに覆われた星形成領域を(恐らく)中心に持ち、星形成率は平均して200太陽質量/年、星質量は10^<11>太陽質量、金属量はほぼ太陽と同じということが明らかになった。MAMBO望遠鏡による中間赤外での観測から星形成率を求めると、UV光から求めた星生成率とほぼ同じであり、これから、sBzK銀河での星形成はやや広がった領域で行われていると推測できる。近傍でよく楕円銀河の先駆的段階と言われているULIRGという天体に比べると、中間・遠赤外での光度が低く、sBzKはサブミリ銀河やULIRGといった超高光度の星形成銀河というよりは、その時期を過ぎてなおかなり高い星生成率を示す、銀河であろうと考えることができる。この後、この銀河では超新星爆発による銀河風の発生か、或いは、AGNによるフィードバックによってガスが吹き飛ばされ、星形成が終了するものと考えられる。その後は、静的に進化するERO(z<1)となり、更には、近傍の楕円銀河となるであろう。一方pBzKは既にこのフェイズをより遠方で終了した天体であり、その前進はDRGといった非常に赤い遠方の星形成銀河(z>2.5)であろう。クラスターリングの様子を見ると、EROとsBzkとは良く似ており、一般の銀河に比べて集中の度合いが強い。また、pBzKはこの二者よりも更にクラスターリングが強く、銀河の数密度は高いところ、(たとえば銀河団のような)では銀河質量の集積と星形成の進行がより急速に進んだことを示唆する。また、空間数密度をみると、sBzKは近傍の明るい楕円銀河のほぼ半分であり、pBzKはそれとほぼ同数である。即ち、これらの銀河の数密度を合わせたものは明るい楕円銀河のそれとほぼ等しい。ということは、z>1.4のBzK銀河はこの時期に星形成を終了し、z〜1でのEROとなり、更に、z〜Oでの巨大楕円銀河になるという道筋が明らかになったと言うことである。銀河進化の遷移は1<z<2の時代に起きた。今後の課題はそれがいかなる原因で発生したかを明らかにすることであり、BzK銀河の形態の進化、AGNとの関係、質量の成長と化学進化との関係を明らかにするのが今後の課題である。また、銀河進化のダウンサイジングとその環境依存性を明らかにすれば、本研究の目的である楕円銀河の形成現場の検証とその起源の解明は達成されたということが出来よう。
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