研究概要 |
従来、標準模型を超える模型の候補としてテクニカラー模型や超対称性模型などが提案されてきた。このうちテクニカラー模型は、近年のLEPやTevatronでのZ,Wの精密測定でほぼ完全に排除されている。また、超対称性模型においても、模型が予言する数多くの超対称性粒子は未だひとつも観測されていない。 このような状況のなか、最近、リトル・ヒッグス模型や脱構築されたヒッグスレス模型と呼ばれる第3の模型の枠組みが提唱され注目を集めている。両者の模型とも非線形シグマ模型に基づく素粒子模型であるが、くりこみ不可能な模型であるため、電弱精密測定の最新成果を用いて輻射補正まで含めて模型を制限する試みはあまり進んでいなかった。 本研究では、これら非線形シグマ模型に基づく標準模型を超える模型に対し、カイラル摂動論の立場から電弱精密測定への影響を系統的に調べた。ヒッグスレス模型については、1)フェルミオン非局所化という効果がない場合には、どのようにパラメータを選んでも理論がユニタリティー条件を満たす限り電弱精密測定の制限と矛盾してしまうこと。2)フェルミオン非局所化の効果を取り入れると電弱精密測定と矛盾しない模型を構築することは容易であること。3)とくに「理想的なフェルミオン非局所化」を仮定するとツリーレベルでは電弱精密測定パラメータへの影響が消えると。4)この場合、LEPにおける電弱ゲージボソン3点結合の測定が模型に制限を与えること。5)カイラル摂動の高次の効果として輻射補正の影響を実際に計算した。上述の成果は、リトル・ヒッグス模型やヒッグスレス模型など非線形シグマ模型を用いた標準模型を超える模型をLHCなどの高エネルギー加速器で直接検証する上で、強い指針を与えるものである。
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