ニュートリノの小さな質量は、非常に大きなMajorana型の質量を持つ右巻きニュートリノが存在することを意味している。この右巻きニュートリノは宇宙初期に生成され宇宙の温度がその質量程度に下がってきたときに、崩壊し始める。その崩壊の終状態はヒッグスボソンとレプトンかヒッグスボソンと反レプトンかである。 もしCPが破れていればそれらの状態への崩壊確率に違いが現れ、崩壊後にレプトン非対称性が生まれる。このレプトンの非対称性は電弱標準理論の非摂動論的効果によりバリオン数の非対称性に移り変わる。このようにして現在の宇宙のバリオン数非対称性の謎が解かれる。 このメカニズムはニュートリノの小さな質量を予言するが、それが発見された現在、最も有望なメカニズムと考えられている。しかし、この考えを超対称性を持つ理論に拡張した場合、問題が生じる。重力場の相棒であるグラビチーノの崩壊が宇宙の元素合成の時期に起こり、そこで作られた軽元素を壊す。この問題を解決するには宇宙の初期温度を1000TeV以下にしておかなければならない。 ところが、上記のバリオン数生成のメカニズムが働くためには宇宙の温度が少なくともGeV必要である。本研究ではこの問題がゲージメヂエーションやアノーマリーメヂエーション模型で解決できることを示した。 またさらに、バリオン数生成のメカニズムを少し修正して、宇宙の温度が1000TeV以下でも現在の宇宙のバリオン数を説明できることを示した。この時、ゲージフェルミオンが数100GeVにスカラークォークが数TeVに予言される。
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